制度としては存在してもなかなか使えない。それが医療費控除
医療費控除という制度があります。
医療費控除とは、年間の医療費が一定額(所得によって変わる)以上支払った場合に適用される所得控除の一種です。要するに「治療にいっぱいお金がかかったから税金負担を軽減してあげるよ」という制度です。株に投資している人は「控除って会社員限定でしょ」と思っている方がいたりするのですが、国は別に控除関係に「株の所得はダメ~」とは言っていません。普通に使えます。
医療費控除の主な対象は、入院費や治療費、処方薬、義肢代金、歯科治療代、はり師・きゅう師・柔道整復師の施術代などです。他には、子供の歯列矯正代なども医療費控除の対象になる医療費です。自分だけでなく、家族の医療費も対象です。この他にも、「これは対象になる医療費」「ならない医療費」というふうに、細かなルールがあります。
医療費がかさんだ年に税金の負担が軽減されるなんて嬉しいと思いますよね。ただ、この医療費控除には意外な落とし穴があります。落とし穴とは・・・医療費控除の対象になるくらいの医療費をなかなか使わないこと、です。
保険を受け取ったらマイナスが基本。だからなかなか使えない医療費控除
医療費控除は医療費控除の対象になる医療費が一定額を超えることで控除・・・という流れなのですが、保険などが下りると、基本的に保険をマイナスすることになります。
たとえば、A病院に10日間入院して10万円かかったとしますよ。「これはついに医療費控除の出番」と思うじゃないですか。が、その後に入院日額1万円の医療保険から10万円下りたら、「保険料も控除も丸取りラッキー」ではなく「医療費から保険で下りたお金を引こうね」という話になります。
医療費控除の対象になりそうな最たるものは入院費です。それなのに、世の多くの人は医療保険に加入しているため、なかなか医療費控除の対象になるくらい医療費を使うことがないという現実があります。健康なのは良いことです。保険が下りるのも有り難いことです。ですが、釈然としない何かがありますよね。
家族の医療費も対象になるため、家族によっては「この年だけ医療費控除が使える」ということもあるかもしれません。しかし、単身世帯は、家族の医療費を合算しようがありません。単身世帯は、医療費控除という制度が存在していても、なかなか使う機会がないのです。
さらに、仕事が忙しくてなかなか病院に行かないという人や、めったに怪我も病気もしないという人、体調不良は市販薬程度で回復してしまうという人も、医療費控除はほとんど使う機会がありません。中には、一生の中で一度も医療費控除と縁がない・・・という人もいるかもしれないですね。
株投資をしている人が手軽に使える控除に寄附金控除(ふるさと納税)がありました。寄附金控除に対して医療費控除は「いまいち使えないんだよなあ」という感覚が拭えません。しかし、セルフメディケーション税制ならどうでしょう?
ドラッグストアで買った目薬や頭痛薬も対象になるセルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とは、かねてより「使う機会がないぞ!」というブーイングが起きていた医療費控除の特例です。「特定の成分を含有する医薬品(OTC医薬品)を年間12,000円以上購入すると、超えた部分が控除の対象になる」のがセルフメディケーション税制です。
税金を払い過ぎていれば還付してもらえますし、まだ払っていなければ負担を軽減してもらえます。あくまで医療費控除の特例なので、医療費控除とセットで使うことができない点には注意が必要です。また、特定の検診や予防接収を受けたなどの条件があります。2つのポイントにさえ気をつければ、医療費控除よりかなり使いやすいと思います。年間12,000円・・・意外と使うからです。
そんなに薬ばかり買うか?と思うかもしれません。では、一例として、筆者の周囲の株の投資している人たちが実際に「買ったことがある」と答えたドラッグストア・スーパーマーケット(医薬品売り場がある店舗のみ)で売っている薬を見てみましょう。意外に身近な薬ばかりなのです。
まずは女性の投資家。
スマートフォンの液晶をよく眺めるので、頭痛と眼精疲労が凄いとのこと。仕事でもパソコンを使うので、日常生活と液晶は切っても切れない関係です。そんな女性投資家が購入しているOTC医薬品は・・・。
頭痛用の薬と目薬です。目薬の方は、ハウスダストの気があるそうで、かゆみを抑える目薬を購入しているとのことでした。頭痛薬と目薬で年間12,000円は余裕で超えるそうです。
男性投資家に話を聞いたところ、こちらもかゆみをおさえるアレルギー用の目薬を色々買っているとのこと。「OTC医薬品は花粉症系の薬が豊富で助かる。花粉症の時期の目薬と薬で、やはり年間12,000円は軽く超えるとのことでした。
他にも「株で負けて胃が痛くなった時や、株で買って飲みに行った時用に」と、昔から愛飲している胃薬を買っているのだそうです。
以外に豊富です。セルフメディケーション税制対象商品。
セルフメディケーション税制の対象になる医薬品はマークが目印
たくさんの薬の中からセルフメディケーション税制の対象になる医薬品はどのように見つければいいのでしょうか。
セルフメディケーション税制の対象になるなら、対象にならないよりなる薬を買いたいと思ってしまいますよね。同じ頭痛に効く薬がAとBの2種類あって迷っている場合、総合的にお得になる方に手を伸ばしてしまうのは、人間の性ではないでしょうか。
セルフメディケーション税制の対象になる薬には、「セルフメディケーション税 控除対象」といったロゴがパッケージにでかでかと表示されています。買う前にちらっとチェックすればOKです。ロゴ自体がけっこう目立つので、まず見落としすることはないと思われます。
それと、レシートにも「セルフメディケーション税制対象」または「★」のような目印が印字されます。厚生労働省では一覧も公開されています。一覧は基本的に2カ月ごとに見直しされます。
セルフメディケーション税制の対象になる一覧を丸ごと覚えることは難しいので(かなりの数です!)、基本は「パッケージでチェック」「レシートでチェック」の2点になります。
ドラッグストアのレシートは保存する!これが鉄則
ドラッグストアやスーパーマーケットの印字を実際に見ると、意外とごちゃごちゃしています。中には食材に混じって医薬品に★マークがついていることも多いです。つまり、意外と見落としやすいんですよね。なので、ドラッグストアや医薬品を扱うスーパーのレシートは、確定申告に向けて保存が基本です。
株に関しては、確認申告をしなくてもOKなケースがあります。ただ、この場合も、控除を使うなら確定申告をすることになります。株の場合は給与収入と違って、一年の頭に「今年は大体これくらいの稼ぎ」というはっきりした予想を立てることはできません。なので、年間を通じて取引してみて初めてどれくらい勝ったかが明確になります。控除を使うかどうかを年間の株取引の結果が明確になってはじめて決めるという人もいます。
レシートをこまめに捨ててしまうタイプの場合、「控除はいいや」とレシートを捨ててしまう事例が多々あります。とりあえず、レシート類は処分せず、取っておいた方が無難です。こまめに捨てたいタイプの人は、大きな箱を用意して、そこにレシートをポイ。これで捨てた気になれます。
利益が株価や市場に左右される株取引だからこそ、控除という可能性は最後まで残しておいた方が得策です。
去年のレシートを捨ててしまった人は、今年の「今」からスタートしてみてください!
日本一般用医薬品連合会では、医療費や薬品代を入れることでセルフメディケーション税制や医療費控除のカンタンなシミュレーションも可能です。こういったネット上の無料シミュレーションも積極的に活用してみてくださいね。