共感覚とは心理学などで使われる用語のひとつです。
共感覚とはどのような意味なのでしょう。
共感覚について分かりやすく説明します。ビジネスにおける共感覚の良いところや困るところも併せて説明しますので「人と感覚が違うようだ」という方や「共感覚に興味がある」という方はぜひ参考にしてください。
共感覚とは?
共感覚とは言葉や数字、音を「言葉や数字」としてだけ認識するのではなく、言葉や数字とはまったく関係のない言葉・物事・象徴でも認識する感覚のことです。
たとえば、ピアノの楽曲を聴いたとします。ピアノの楽曲であれば、ピアノの「音」として認識するはずです。しかし、それを音としてだけ認識するのではなく、「色」としても認識しました。
この楽曲は赤色の印象だ。
ピアノのドの音は赤色のイメージだ。
このように音とは関係のない色としてのイメージで音を認識する。これは共感覚の一種です。
共感覚のメカニズムとは?
共感覚がなぜ起こるのか詳しくは解明されていません。
メカニズムとしては2つ考えられると言われています。
・脳の神経が強く結ばれているから
・脳に異なった感覚同士を統合する仕組みがあるから
共感覚のメカニズムの仮説のひとつは「脳の真剣が強く結ばれている説」です。
たとえば、言葉と色を司っている脳の神経同士が強く結ばれていると、共感覚を持ちやすいと言われています。ある言葉を聞いたときに言葉を司る神経と一緒に強く結ばれている色を司る神経が動くため、言葉=色 と変換されたり、印象を持ったりするわけです。
この他にも言葉と立体を司る部分が強く結びついているケースや、音と味覚を司る神経が強く結びついているなど、さまざまなケースが考えられます。
共感覚のメカニズムもうひとつの仮説は「脳に異なる感覚を統合する仕組みがある説」です。
たとえば、音に味覚を感じるとします。本来、音を感じる仕組み・部分と味覚の仕組み・部分は別々です。しかし、脳に味覚と音を統合するシステムが存在していて、そのシステムが感覚を統合するために共感覚が起きているのではないかという説になります。
共感覚のタイプとは
共感覚には色以外にもさまざまなタイプがあります。
これらはあくまで一例で、この他にもいろいろな共感覚タイプがあります。
数字が列や捻じれ、立体的に見える
数字や数式などが捻じれたり、折れ曲がったり、立体に見えたりする共感覚タイプです。
たとえば、数式の数字を見たときに5や6などの数字が立体的に見えてしまい、立体として把握するようなタイプがこの共感覚になります。数式などを見たときに、折れ曲がっていたり、捻じれているように見えたりするのもこの共感覚タイプです。
また、「5+6」を見たときに捻じれて見え、後日また「5+6」を見たときに同じ捻じれが感じられたため「同じ数式だ」と感じました。このように、捻じれや立体、折れ曲がりなどによって認識する共感覚タイプになります。
言葉や音に味を感じる
言葉や音を見聞きしたときに「味」に変換されるタイプの共感覚です。味そのものを感じるタイプもいれば、頭の中で味に変換されるタイプとさまざまです。
たとえば、ピアノとヴァイオリンの楽曲を聴いたとします。音は基本的に音ですが、このタイプの共感覚を持つ人は楽曲や音のイメージを味に変換します。「イチゴ飴の味がする曲」「この曲のこの部分の演奏は、甘さが強いね」など、印象やイメージが味になるわけです。
独房や刑務所など言葉を耳にすると「冷えたベーコンの味」「冷えた焼肉の味」など、音や言葉を味としても認識するのがこの共感覚タイプになります。
文章や言葉、音に色を感じる
文章や言葉に色を感じる、あるいは見えるタイプの共感覚です。
言葉を見ると言葉ごとに赤や緑、青などの色が見えました。たとえば、「7」は青い色がついて見える。「た」を見ると赤い色がついている。こんなふうに言葉ひとつひとつに色が見えるのが色タイプの共感覚タイプです。
この他に文章を見たときはグラデーションに見えたり、言葉や文章を聴いた瞬間に頭に色が浮かんだりするなど、言葉や音、文章などを色として認識します。
その他の共感覚タイプもある
音や言葉などから動き(体の姿勢)が浮かび、姿勢や体の動きとして認識する共感覚タイプなどがあります。また、言葉や音をかたち(図形など)として認識する共感覚や、文字が人格(キャラクター)を持っており、文字や言葉をひとつの人格として把握する共感覚など、さまざまです。
共感覚はどのくらいの人が持っているの?
どれくらいの人が共感覚を持っているのかは解明されていません。
なぜなら、多くの人が「自分は共感覚だ」と気づいていないからです。また、言葉や音を色や味覚、かたちなどに感じる感覚のことを共感覚だと理解していないため、自己申告が難しいからです。
ただ、一説によると言葉・文章を色に感じる共感覚タイプは人口の1~2%の割合で存在しているとも言われています。共感覚は多種多様なタイプがありますが、人口のうち4%は何らかの共感覚を持っているとも言われます。
自分の共感覚に気づかず生活している隠れ共感覚者も含めると、人口に占める共感覚者の割合はもっと増えることでしょう。
共感覚の特徴とは?
共感覚には主に4つの特徴があります。
・子供の頃から見られる(経験による会得ではない)
・年齢を重ねても共感覚は消えない
・共感覚は本人もコントロールできない
・共感覚には感情も伴う
共感覚は経験や練習によって身につくわけではありません。子供の頃から何気なく持っているものです。「共感覚が欲しい」と思っても、子供の頃から何気なく身についている感覚ですから、経験や練習、勉強による会得は基本的にできません。目が良い。耳が良い。感性が良い。このように、その人個人の感覚です。
また、共感覚は「いらない」と思っても、基本的に加齢などによって消えることはありません。自分で共感覚をコントロールすることもできないため、「あという文字を赤と認識するこの感覚がなくなって欲しい」「紛らわしい」「疲れる」と思っても、自分が自分である限り、基本的に上手く付き合って行くしかありません。
共感覚は感情も伴うところも特徴です。
たとえば、計算式の「2」が黄色に見え、「7」が青に見えたとします。「8」は橙色に見えました。「2+7+8」という計算式があり、数字を全部足すと計算結果が好みではない色になってしまいました。色に関する共感覚の人はこのときに不快感や「色が汚くて嫌だな」という気持ちになってしまいます。このように、文意や計算式、曲などと違ったところで、認識により違った感情を覚えることがあるのが共感覚の特徴です。
共感覚の良いところと困るところは?
共感覚には良いところと困ったところがあります。
ビジネスを中心に共感覚の良いところと困ったところを説明します。
共感覚の良いところ
共感覚は一種の個性であると捉えられています。
言葉を意味の他に色やかたちで認識できるということは、認識や思考の幅が広がるということです。芸術面やデザイン面、文筆面などに共感覚を活かし、仕事の幅を広げることも可能です。
たとえば、デザインの仕事をしていたとします。文字や文章、音からかたちを認識する共感覚を活かし、会社のロゴや商品のパッケージデザインを担当しています。このように、共感覚は仕事にも活かせるわけです。
共感覚の困ったところ
お子さんが「数字や文字に色がついて見える」と言うことがあります。そのために、計算の答えを間違えてしまうようなケースがあります。
たとえば、1+5の計算式で1が青に見え、5が赤に見えたとします。答えは6ですが、色の認識が混ざってしまうために、紫色に見える数字だった9を答えとして書いてしまうわけです。色と数字が混ざってしまうからこその感覚です。
ビジネス面でも同じことが言えます。大人になれば子供の頃より自分の共感覚に慣れているケースも少なくありません。しかしながらビジネスの相手に色を使った表現をしてしまうなど、独特な感性を発揮してしまい、意思疎通する上で「通じない」となってしまうこともあります。
共感覚により言葉や音の認識が独特だからこそ起きてしまう困ったことです。
最後に
共感覚について説明しました。
共感覚とは言葉や音、文章などを本来の意味とは異なる認識で理解・認識することです。日本人の4%ほどは共感覚者だと言われているので、意外に身近にいるタイプであり、身近な個性かもしれません。
共感覚は認識の違いから苦労することもありますが、上手くビジネスに活用することも可能です。何より100人に4人ほどは共感覚者と言える日本ですから、ビジネス知識として知っておくことも必要かもしれません。
共感覚については各種の書籍も出ています。この機会に読んでみてはいかがでしょう。